水生生物飼育が早わかり!

水生生物飼育の基本

水の中で暮らす生き物たちを飼育するのに共通する基本的なことがらを紹介します。

水生生物飼育のスタート

水中の生物は水質と水温に大きな影響を受けます。ここでは特にこの二つにポイントをあててご説明していきます。クジラやアザラシなどを除いて、ほとんどの水生生物は自分では体温を調節できないため、水温がそのまま体温となります。ですから水温が急激に変化すると大きなダメージを与えてしまうのです。また水質の急激な変化も水生生物にとっては大変な衝撃となり、水生生物に生命の危険すら招くおそれがあります。水生生物の飼育に際しては、これらを常に意識しておくことが大切です。

飼育装置のセット

■用意するもの
熱帯魚用の水槽熱帯魚用オートヒーター(熱帯性の水生生物の場合)熱帯魚用フィルター、塩素中和剤、水温計、活性炭(生き物と飼育器具を同時購入の場合)

1.買ってきた水槽や器具を観賞魚用のスポンジを使って水道水で洗います。絶対に石けんや洗剤は使わないようにしましょう!
2.ヒーター(必要があればヒーターカバー)とフィルター、水温計をセットします。まだコンセントは差しません!
3.水道水を入れます。
4.ヒーターとフィルターが水中にあることを確認してコンセントを差します。
5.水道水の場合は塩素中和剤を入れます。ただし、デリケートな生き物を飼う場合は塩素中和剤は入れず、水槽に水だけ入れて1~2日おいておく(汲み置き水をつくる)ことをおすすめします。特にカブトエビなどを飼う場合は汲み置き水を使う方が安全です。

このまま1~2週間放置しておきますと、フィルターの中に自然に濾過生物が殖えてきます。水生生物を飼っていると水の中に有害な成分が増えてくるのですが、この成分の毒性を弱めてくれるのがフィルターの中に住み着く濾過生物なのです。水生生物の飼育においては実はこの働きが最も重要です。目に見えるゴミはフィルターを動かせばすぐに取り除かれますが、水中の有害成分はフィルターの中に濾過生物がいないと増えるいっぽうとなってしまい、水槽内はどんどん危険な環境になっていってしまいます。もし、やむにやまれぬ事情で、どうしても生き物と飼育設備を同時に購入せざるを得ない場合は、必ず活性炭を入れておきましょう。濾過生物は有害物質を毒性の弱い別の物質に換えてくれますが、活性炭はこれらを有無を云わさず吸着してくれます。即効性があり、目に見えて高い効果があるので、いつもひとつは常備しておくと突然の水質悪化などのいざという時に助かるでしょう。活性炭はケチらずに出来るだけ品質の良いものを選んで下さい。中でも竹炭は絶大な効果がありますのでおすすめです。ちなみに細かい破片がついているので、ちゃんと水ですすいでから水槽に入れるようにしましょう。飼育を続けていくと水槽内には次第に様々なプランクトンが発生してくるようになります。そうなればいっそう水は安定してきます。水をキレイにしてくれるのは実は濾過生物だけではなく、こうしたプランクトンも水槽の環境を整えるのに重要な働きをしているのです。

飼育装置に水生生物を入れる

水生生物を水槽に入れる際には、特に水温と水質の急激な変化を与えない事が大事です。汚れた水から新しい水へ移し替えるのなら問題ないかというと、そうではありません。水には汚れているとか新しいとかの他に、PH(ペーハー:水素イオンの量)と硬度(水中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量)といった水質があって、これらが急激に変化することは水生生物にとっては時として非常に危険な事態を招きます。新しい環境には常に危険が潜んでいることを忘れてはならないのです。

【丈夫な水生生物の場合】
1.生き物を袋ごと水槽に浮かせて、袋の中の水温と水槽の水温を同じにします。
2.袋の口を開けて、袋の水を少し捨てて、水槽の水を少し入れます。10分から30分おきくらいにこれを繰り返します。袋の中の水が水槽の水と7から8割入れ替わった頃にゆっくりと水槽に放します。

【水質の変化に敏感な水生生物の場合】
1.丈夫な水生生物の場合と同じです。
2.プラケースや魚専用のバケツなどに移し、オートヒーターを入れ、エアレーション(※エアーポンプとエアストーンで空気を送ること)を行い、水槽より低い位置に置きます。水の量は容器の5分の1ほどになるよう、もし多すぎれば減らしておきます。この時、ヒーターが水から出ていないことを確認しましょう。水位が足りずにヒーターが水から出てしまう場合はヒーターが水に完全に沈むくらいまで入れます。
3.二本のエアチューブを分岐用の二叉でつなげて、エアチューブのついていない方のコックを完全に止め、エアチューブのついている方のコックを半分ほど開けます。エアチューブの片方を水槽にいれ、もう片方のエアチューブの口に大きめのスポイトを空気を出してから差し込み、スポイトで空気を吸い込むとエアチューブから水が送り出されてきますので、エアチューブが付いている方のコックを調節して水がゆっくりゆっくり送り出されてくるようにします。プラケースの水量が少ない場合はポタポタという感じです。
4.数時間後、水槽が水でいっぱいになったら、中の生き物を放します。決して、そのまま忘れて水があふれ出さないように、くれぐれもご注意を!

注意しなくてはいけない飼育上のポイント

思わぬ事態にならないために、日頃から注意しておかなくてはならない大切なポイントです。

フタ

水生生物を飼育する場合、飼育容器の外に出てしまうことは即、生命の危機に関わることです。そのため、生き物が飼育容器の外に出てしまわないようにしっかりとフタをしておかなくてはなりません。特に魚はよく飛び出します。ほんのわずかなすき間に狙いを定め、驚くほどのジャンプをして飛び出してしまうので、小さなすき間だからと言って油断はできません。透明な下敷きなどを加工して、わずかなすき間もしっかりとふさいでおきましょう。中にはフタを吹っ飛ばして飛び出してしまう強者もいますが、こういった生き物を飼育する場合にはフタが壊れない程度の適度な重しを乗せるなど、十分な注意が必要です。

水の蒸発

水槽内の水は時間が経つにつれ蒸発して水位が下がってきます。ヒーターやフィルターが絶対に水から出ることのないように常に注意しておきましょう。また、海水の場合は塩分が濃くなり、中の生き物に深刻な影響を与えますので、この点も注意が必要です。淡水の場合においても有害な成分が濃くなってきますので気を付けておかなくてはなりません。プラケースについているような網目状のフタでは特に蒸発が早いので要注意です。

水替え

水生生物を飼育していると、どうしても水中に窒素化合物という有害な成分が増えてきます。亜硝酸塩や硝酸塩といった窒素化合物の増加は水生生物の生命をおびやかしますので、水が透明で澄んでいても定期的に水を換えてあげる必要があります。水を換えたり蒸発した分の水を加えたりするには次の手順で行います。

1.容器に水を入れる。※水替え用の容器を用意できる場合はほこりが入らないように隙間のないフタのあるものを使います。
2.塩素中和剤を入れてよくかきまぜます。※水替え用の容器を用意できる場合は塩素中和剤を入れずにそのまま数日おいて汲み置き水を作ります。自然に塩素が抜け、薬品を入れて中和した場合よりも安全で優しい水ができあがるので、カブトエビなどの小型甲殻類や熱帯卵生メダカなどのデリケートな生き物に適しています。
3.水槽内の水温と同じ温度にします。

特に3番目の水温を合わせるというのは重要です。いきなり冷たい水を入れてしまうと水槽内の温度が急激に下がってしまいますので注意が必要です。水温を合わせる方法としては次の様なものがあります。
1.あらかじめ水替え用の水槽を別に用意しておいてヒーターで温めておく。
2.お湯を入れて温度を合わせる。
3.プラケースに新しい水を入れて、そのまましばらく水槽の中に浮かせておきます。新しい水の温度が水槽の水の温度と同じになった頃にプラケースの水を水槽に入れます。

餌はやりすぎない

水生生物にとって有害な成分である窒素化合物の元である窒素は主に餌から水槽内に持ち込まれます。食べられずに水槽の中に放置された餌の残りは急速に窒素化合物を増加させる原因となり、水生生物の種類によっては深刻な事態を招きます。食べ残しは速やかに取り出しましょう。また、食べ過ぎによる消化不良の糞も水を汚します。中には後になって吐き出す生き物もいますので、食べるからといって与えすぎないことも大切です。

病気について

水生生物も寄生虫や細菌、ウィルスによるものなど、様々な病気にかかります。中には急速に症状が進行して取り返しのつかない事態に陥ることも少なくありません。こうした時、生死を分けるのは一刻も早い治療です。観賞魚の場合、白点病やわたかぶり病などは初期なら食塩の投入だけで直ってしまうことも多いのですが、通常の魚病薬では効果のないエロモナス属菌やカラムナリスの脅威に備えて、これらにも効果の高いグリーンFゴールド(淡水魚・海水魚兼用)などを常備しておくと、いざと言うときに安心です。以前、来たばかりのポリプテルス・エンドリケリーの幼魚がエロモナス属菌に感染してしまったことがあります。体が赤く充血し、多量の粘液に覆われて、見るからに痛々しかったのですが、規定量のグリーンFゴールドの投入により3日ほどで治りました。念のため、その後も一週間ほど薬浴を続けましたが、以来、再発することはありませんでした。実はこのとき、薬を切らしていたために、病気で苦しむ愛魚を前に大騒動だったのです。私には日頃から薬を備えておくことの重要さを思い知らされた出来事でした。ところでエビやザリガニなどの甲殻類、タコやイカなどの軟体動物など、薬品が即、死につながってしまう生き物もいますので、その使用には十分な注意が必要です。また、熱帯魚でもナマズ類やドジョウ類などは薬品にあまり強くないようですので、これらの魚を薬浴する場合は規定の半分ほどの濃度で使用しましょう。

手洗い1

人の手には汚れや油分があり、これらは水槽の水を汚します。ですから、水槽に手を入れる前には必ず水道水でよく手を洗いましょう。ただし、石けんを使う場合はよーく洗い流して下さい。石けんや洗剤は、バケツいっぱいの水に針の先ほどの量を入れただけでも水生生物の生命に関わる場合があるほど、水生生物にとっては危険な物質です。水槽内にはできるだけ手を入れるのは避け、大きめのスポイトや水草用の長いピンセットで作業をするのが良いでしょう。

手洗い2

衛生上、生体や飼育器具を触った後は、必ず石けんでよく手を洗いましょう。生き物には何かしらのバイ菌や寄生虫などが付いているものです。こうした寄生虫の中には身の毛もよだつような恐ろしい症状を引き起こすものもいます。生体や飼育器具を触った後に手を洗わずに食事をしたりするのは極めて危険な行為である事を頭に入れておいて下さい。

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